ユメミルクスリ
メーカー 原画 シナリオ
ruf 灰村キヨタカ ユメミルクスリ製作委員会 /
田中ロミオ




総合点数 オススメ シナリオ CG BGM システム
165 85 25 20 20 15






互いに影響しあうクスリ




 ※ネタバレ注意!!


 読んでしまうと楽しみが半減する事請け合いなので覚悟するように。















 このユメミルクスリは最初から全然期待していませんでしたよ。
 だって見た目からしてエロゲーユーザーに対して一般受けするような作品じゃないのは解りますし、何よりシナリオに
 私にとっての鬼門である田中ロミオが関与している辺りで地雷臭がプンプンしていましたからね(^^;;
 ( 関連→  )










 だけどメチャメチャ面白かったんですよ










 いやー、文字通り想定外の面白さ。
 クスリだのイジメだの、きな臭い用語が出てくるけど決してダーク一辺倒になることなく、実際は凄く温かみのある作品だった。
 しかも作品を通してユーザーに語りかけてくるテーマが実に解りやすく胸にストンと落ちてくるところも今までの田中ロミオ
 作品らしくなくて秀逸な作品でした>マテ
 そこら辺をキャラごとのシナリオで語ろうと思います。









 ■白木 あえか シナリオ



 おそらく作品の価値の半分はあえかシナリオで出来ている(ぉ
 それぐらいシナリオの重みと展開の意外性では群を抜いていたといっても過言ではなかったです。
 転校生で、とある原因からクラスに馴染めずイジメの対象となっていたあえかがたまたま接点を持った主人公と擬似的な
 恋人関係になるものの、最初のうちはあえかをクラスのイジメから救うような事はしません(;´Д`)  


 やれやれ、お決まりのヘタレ主人公ですか、と思っていましたが、あえかが放課後の教室でアントワネットこと南条 京香
 その周囲の仲間によって髪を切られる陰湿な行為に発展した時に物語が完璧に変わりましたね。





 「殺しちゃおうよ、わたしを」





 この台詞が出てきたときは背筋に寒気が走りましたね(汗 大事な主人公を傷つけるくらいなら死を選ぶという優しさ。
 それまでのシナリオの展開であえかの持っていたイメージが崩壊。 単に浮いているだけのトロい人物などではなく、実際は
 熾烈な感情を秘めたキャラだったとは・・・・・・イメージ色として「白」を思い浮かべるキャラでしたが実際は高熱を発する
 灼熱の白のイメージでした。
 生まれて初めて自分を認めてくれた主人公が、そして自分が大切だと思った人になりえたからこそ後半の展開があったと
 感じましたよ。 特にイジメを止めた主人公があえかと共にイジメにあうようになり、今まで苛められていたのが嘘のように
 必死になってアントワネットを殴りつけるあえかを見た時に実は弱々しい設定などではなかったです。
 あえて言うなら、自分を愛する者に対しての究極的な優しさ。
 それは自分の大切な人を傷つけたり、攻撃する者に対して過激なまでの報復を何の躊躇いもなくやってのけるだけの意思、
 というか感情を持ち合わせていたことでしょうね。
 それがクライマックスで爆発するんですよ、主人公も。





 「南条さん、死んでくれないかな?」





 凄いね(;´Д`)  
 主人公の目前であえかがレイープされそうになっているとはいえ、まるで別人のように邪魔者を排除してあっという間に
 アントワネットの首にナイフを当てて主導権を握ったときの主人公の表情がゾッとするくらい感情が無いよ(^^;;
 そしてトドメとばかりの首を絞めてアントワネットを本気で殺そうとしている主人公の手を優しく包むあえかの手と優しい表情。
 「あっ、これで終わりなの?(´く_`) 」と思っている私の予想を覆す台詞。





 「どうして、1人で南条さんを殺しちゃうの?」





 思いつかなかったとばかりにあえかに謝る主人公。 そして一緒に首を絞める2人(何 そして恐怖するアントワネット
 もうこの場面のキャラの表情と感情の温度差というか決定的なズレが凄いよw 首を絞めるときのあえかの限りなく優しさに
 溢れた笑みはマジで背筋が凍るって・・・・・・そして恐怖で歪んだアントワネットの醜い顔がなんとも言えない・・・・・・。 
 結局はアントワネットを殺さなかったんですがね。 個人的にはその時の主人公の顔が見たかったですが・・・・・・。
 ラストのごくアッサリした終わり方は色々と意見はありそうですが個人的にはベストだと思っていますよ。
 特に最後のバイトが終わって主人公があえかを迎えにいって夕暮れの道を歩くシーンは感動的。 あれで泣けたよ(´д⊂


 あえかシナリオはやはりこの作品の要といっても良いシナリオでしょう。
 無個性で自分の感情を隠して周囲と合わせる(擬態する)事によって、義理の家族に迷惑をかけないようにして生きてきた
 主人公と自分の感情を殺して周囲と合わせようにも不慮の出来事によって浮いてしまったあえかとがたまたま巡り合い、
 気持ちを知ったときに文字通り生まれ変わったんだと思います。 例えそれが自分達を傷つけ、邪魔するものに対して容赦の
 無い実力行使を行うことでも大事なものを守る為の行動の崇高さを表現した意味で言えば文句なく最高のシナリオでした。









 ■桐宮 シナリオ



 最初の設定で将来の事を病的に怯えていると書いてあったので、まあそっち方面の話かと思っていましたが。
 実際はちと違っていましたね。 確かに怯えてはいましたよ。 それが将来という少し遠い事ではなく明日という事だった訳で。
 あえかシナリオと比べると劣っているという言い方はあまり宜しくないですが、シナリオでは遅れはとっていたものの、こちらも
 実に現実的でリアルな内容だったと言わざるを得ない。
 ぶっちゃけ言うと私はかなり感情移入しました。 あくまで設定部分ではありましたけど。


 少し個人的なことになりますが私も弥津紀と同じように感じていた時期はあります。 今でも少しそうですが(ぇ
 寝て起きたら次の日、という恐らくはほぼ一般人の全ての人にとって当たり前の日常に不安(もしくは恐怖)を覚えるというのは
 如何に日常から逸脱しているか解るだろうか? 私はご存知の通り今年の3月まで無職でした。 バイトの掛け持ちで
 働かないと明日には飢え死に。 そんな生活を数年繰り返して、ふと空いた時間に考える事は何気ない明日以降のこと。
 あと数時間で日付が変わるというのに明日に対して明確なビジョンが浮かばない恐怖とは経験者にしか解らないだろう。
 弥津紀の言うとおり、「寝るのと死ぬのは同じ事」というのも納得できる自分がいる。 つまり「生きている」のではなく、
 「生かされている」という事は、自分の意思で生きているのがすら疑問に思う瞬間、つまりは「生かされている=死」という事
 ではないのだろうか。
 だからこそ、ああも刹那的に快楽を貪欲に求めていたんでしょう。 私の愛読書である「EDEN」というマンガに登場する
 ソフィアという女性と弥津紀は良く似ているんですよ・・・・・・才能があっても生きている事に価値を見出せず、それが快楽か
 自傷行為でしか生きていると実感できないという人間的な欠陥を抱えている辺りも共感できたんですがねぇ・・・・・・('A`)


 さて、私のカウンセリングもここまでにしておきましょう(ぉ
 後半まではそんな悩みを抱えた弥津紀の快楽を求めた行動にひたすら付き合う主人公がやがて弥津紀の破天荒さに
 惹かれていくという割とストレートな恋愛物語で進むも、快楽に身を委ねるうちにクスリに手を出してそれが元で弥津紀
 殺そうとしたりしてショックを受けているうちに体が参ってダウン。 それが原因で失踪してしまう弥津紀
 そうして数ヶ月経って何時の間にか生徒会長になって忙しい日々を過す主人公宅に弥津紀登場。





 臨月間近のマタニティ姿で(;´Д`)ォィォィ





 ここから少しギャグが入って面白かったですねw
 オチを先に書いてしまえば、妊娠した事実を知った事で明日を初めて意識した弥津紀は、逆に初めて認識した感覚に
 恐怖して雲隠れしてしまった
事実という辺りも意外に可愛かったよw
 まあ、その後にお約束の破水が始まって出産する下りも読めていたけど結構ジーンと来てしまった俺ガイル。
 その前の主人公が弥津紀のお腹に手を当てて、まだ生まれない自分の子供に挨拶するシーンも良かったですよ。


 この弥津紀シナリオの肝はやはり才色兼備の女性が如何に生きがいを見つけるかということでしょうか。
 それがたった一つの現実、子供を生むという事で主人公にしても弥津紀にしても新しい人生を見つけたという尊さを
 実感できるシナリオだったと思います。
 個人的には巷で言われているほど悪くなかったんですがね。









 ■ねこ子シナリオ



 まー見た目で退いてしまった自分が居ましたが、シナリオは3人のうちでは一番解り易かったです。
 正直に言ってしまうと終盤まではそれほど面白いと思うシナリオでもなかったです(ぉ
 物語は夜な夜な珍妙な格好で街中を徘徊し、クスリでキめて妖精郷を探すねこ子に付き合っていた主人公がやがてクスリに
 耐性が出来つつあるねこ子に危機感を抱いて止めさせようとする辺りからようやく面白くなりました。
 そうして妖精郷の在り処を求めて駅前の樹に登ったものの、クスリの効果が切れて絶望に打ちひしがれるねこ子。 そして
 当然の如く警察の厄介になって御用。 次の日に学校に呼び出しを食らう主人公。


 そこでようやくねこ子の正体が判明するんですが・・・・・・意外だったというか、全く予想していなかった人物だったので確かに
 面食らいましたけどw どっちかといえば正体よりも呼び出されて一言も発しないねこ子の顔を両親が上げさせた時の虚ろな
 量目の方がよっぽど印象的でしたね〜。 後で書きますけど、本当にこの原画家さんは私の見たいと思う絵をしっかり描いて
 くれる作家さんですね。 埒のない話し合いにしびれを切らした主人公がねこ子を連れ出して最後の妖精郷探しをする事を
 提案して試しに主人公が買ったクスリでキめた2人は再び樹の上に上り、ようやく見つけた妖精郷に別れを告げて本当の
 妖精郷を得る為にねこ子は主人公と別れてしまう。


 ラストの展開を見てもねこ子のシナリオが実に解りやすかった。 それはこの作品のテーマを程よく噛み砕いて作られている
 からと私は思っています。 なんの変哲もない日常を送っていたねこ子がクスリに手を出してようやく得た変化のある生活。 
 でもそれは欺瞞に満ちた刹那的な生き方に終止符を打ったのが主人公という存在。 それこそがねこ子の無色な日々に
 初めて色をつけた人物だったからでしょう・・・・・・主人公にしても奇抜な行動のねこ子に影響を受けて、優等生の仮面を
 被った生活から初めて自分が欲した刺激ある生活を得たという点で互いが理想の妖精郷だったということでしょうか。









 最初に書いたとおり、この作品は「ダウナー系青春恋愛AVG」などと銘打っていますが実際は違いますね。
 これは極めて人と人のふれあいを通して自分自身の存在意義を見つけていく物語でした。 周囲に溶け込めず、浮いて
 しまったり奇抜な行動に逃避したりするヒロインと、決して人と交わらず壁を作りつつも他人と歩調を合わせる事によって
 擬態している主人公が文字通り触れ合うことによって自分自身の存在意義を発見していくという、現代社会の中の集団
 生活で忘れているものを思い出させるテーマは素直に受け入れられましたよ。


 あと、もう1つのテーマとして『家族』というのが結構重要なキーワードでした。 人によっては出番や語るところが少ないと
 いう方も居るでしょうが、あくまで見守るというスタンスに徹して主人公(もしくはヒロイン)をフォローしていく辺りもあざとい
 演出にならず、今時の親子の関係からすれば理想的な家族ではなかったではないでしょうか。 血の繋がらない家族である
 主人公はその事で距離をとろうとしているのに、それすら全てを無条件で受け入れているんですから・・・・・・。
 そういう環境だからこそ主人公は世間からズレたヒロインと結ばれる事が出来たと思います。


 そういう意味ではこの作品をクリアした時に自分の心が少し浄化されたような気がします。 決して作品としては目新しい
 要素はないし、技術的にもアナクロといっても良いシンプルなADVでしたが、純粋にストーリーに熱中できたという点で言えば
 優れた作品だったと思います。



 






シナリオ

 本当に田中ロミオが関わっているといって避けなくて良かったと思う良作でした。
 今までの複雑なものでなく、日常生活にあるテーマだった事と、それを解りやすくシナリオを通して表現
 してくれたから面白かったんですがw 
 シナリオの長さに関して短いという意見もあるようですが私は丁度良かったと思いますがね。 もしも、
 これ以上長いと只でさえ陰湿な表現が多いだけに毒が強くなりすぎますからね。
 それにしてもあえかシナリオにおけるあのイジメって今時はそうなんでしょうか? 幾らなんでもスタンガ
 ンを使うのは既に傷害罪だと思う
けど・・・・・・。

 あと少し勿体ないと思ったのは、義妹の綾が攻略できなかった事でしょうかw
 結構味のあるキャラでしたので攻略できなかったのは少し惜しい気もしますね。 まあ多少は色っぽい
 シーンもあるけど勿体なかったなあ。


原画・CG

 原画は多分エロゲー初デビューとなる灰村キヨタカさん。
 全然知らない方なので調べてみると小説の挿絵とかを描いていた人みたいで、多分、その影響だと
 思いますが、キャラクターの表情とかに感情を乗っけるのが巧い人だなと個人的に思いました。
 恐らくは今までの経験でキャラクターの設定とか特徴を掴み易いのでしょうし、それをCGとして描くのも
 違和感なく出来るのだと思いますが、そこら辺が上手くいったお陰で物語を楽しめたのも事実。
 この作品の成功の半分は間違いなく灰村キヨタカさんの功績でしょう。

 あと背景も独特でしたが、不安定な心理状態のキャラが多かったせいか逆にそれが違和感なく溶け
 込めていたのも良かったです。 この作品で緻密な背景だと重くなりそうで怖かったですからね(^^;;

 ※1/9追記 灰村キヨタカさんは以前にも3作品ほど原画を担当されていたそうです。
 ご指摘ありがとうございます。



音楽・BGM

 主題歌の「せかいにさよなら」もかなり良かったですが、BGMもなかなか世界観に合う曲が多かったのも
 高評価。  あとBGMの曲名もセンスがあって個人的にはお気に入りですよ〜♪


オススメ度

 作品として確かに手に取りやすい雰囲気ではないですが、それで敬遠するのは勿体ないですよ?
 表層的なイメージはクスリとかイジメなどヘビーですが、一旦プレイするとそれは等身大の自分を鏡に
 映したかのようなテーマでありました。
 もしも、今の自分に少しでも違和感や不安を覚えているのでしたらプレイする事をお勧めいたします。
 点数は低く抑えていますが「家族計画」以来となる問答無用で他人に勧めたい作品になりつつあります。


My Favorite's

 そりゃ当然の如く白木 あえかを推しますがな( ´∀`)b
 一度で良いので彼女のシナリオで微笑んでいるシーンを見たら一発ですよw まあ彼女の微笑みの
 本当の意味を知ると驚愕するでしょうが・・・・・・決して無垢な笑みなどではないですからね。

 次点は義妹の綾。 悲しみの非攻略キャラとは・・・・・・良い味出しているんですがねロリ体系だし(死

 因みにワーストキャラは当然アントワネットを(ぉ
 やっぱり、こういう女ってリアルで居るんでしょうかね? それだったら本気で嫌な世の中だよな〜。


備考

 今時の萌えゲーに飽きていたら試す価値はかなりある作品の一つ。 正直、去年のうちにプレイせずに
 年を越したのは痛かった・・・・・・もしプレイしていたら私の中のランキングは変わっていたでしょうから。

 とはいえ、こういう良作に日の目が当たらない今のエロゲーの現状に少しばかり嘆きたい気分ですが
 新年最初の作品がこれで良かったとは思いましたが。


 



2006年1月8日 草薙静流





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